【南海グループのイノベーション人材 vol.4】長屋徹さん ―感情共有プラットフォーム『EMOSHARE』立ち上げまでの苦悩と変化―
イノベーション人財
南海グループが選ばれる沿線、選ばれる企業グループとなるために必要な成長と変化。
その実現に向けて新規事業という一歩を踏み出す南海人に、挑戦への想いについて語っていただく『南海グループのイノベーション人材』。
第4回は、誰もが好きなことを同じ熱量で語り合える世界の実現を目指す株式会社EMOSHARE(エモシェア) 代表取締役社長 長屋徹さんをご紹介いたします。
EMOSHAREは、ファンの「想い」に徹底的にフォーカスした、新しい感情共有プラットフォームサービス。南海電鉄 新規事業開発プログラム発ベンチャーとして、経済産業省の「大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金」(出向起業等創出支援事業)において補助対象事業者に採択されています。
以下では、これまでのご経歴や事業を立ち上げるまでの苦悩、そして新規事業開発プログラム経て変化した姿勢など、インタビュー内容をお届けします。
Q.初めに、ご入社から新規事業開発プログラム参加までの経緯を教えてください。
A.2017年に南海電鉄に入社し、最初はグループ事業部・経理部の業務に携わっていました。取り扱う物事に慣れていく一方で、それとはまた違った刺激が欲しい、自分自身が一個人としてステップアップしたいという想いが湧き、ちょうど社内で新規事業プログラムの案内を見て「コレは面白そうだ」と参加したのがきっかけです。
だから他の2つの法人(『Every buddy』/『LAWN』)を立ち上げた方々の参加動機とは全然違いましたね。悪い意味で気楽に入ったところはあるかもしれません。参加当初は「こんな大変なことになるとは思ってなかった!」という驚きの連続でした。
Q.元々刺激を求めたり、「新しいモノ好き」なタイプでしたか?
A.頑張ること自体は好きだったのかもしれませんが、入社したばかりの頃からそういう意欲があったわけではありませんでした。どちらかと言えば「鉄道会社は安定している」と捉えていた気がします。新規事業の「し」の字も無いような思考ですね(笑)
Q.入社後、ご自身の業務に対する考え方が変化していったのでしょうか?
A.そうですね、きっかけは入社1年目の年度末でした。当時かなり繁忙期で、ふと、1日24時間のうち3分の1、もしかするとそれ以上、1日の半分ぐらいは仕事に費やしてるという事実に気づいたんです。それと同時に「自分はこの時間を心から面白がって過ごせているのか」という疑問が浮かびました。
そして、仮にそうではないとすれば「自分の人生、このままで良いのだろうか」と妙な危機感を持ち始めて…刺激というよりは「自分のやりたいことを見つけて、それに時間が使えているか」を意識するようになりました。
Q.今の事業に繋がる「やりたいこと」は、どのようにして見つかったのですか?
A.それ自体も新規事業開発プログラムの最中に決まりました。自分が本当にやりたいところを見つけようとするところから事務局が伴走してくれるのは、このプログラムの良いところだと思います。『EMOSHARE』は事業のミッションを決まるまでに9か月かかったのですが、その期間中、事務局の皆さんはずっと向き合ってくださいました。
プログラムへの参加当初は「オタク友達を作りたい」というミッションを掲げていて、「何かしっくりこないな…」と思いながらも、とりあえず動いていました。その後所属部門での業務に注力していたことで、一時期プログラムへの参加が難しくなり、復帰した時には自身のやりたかったことが全く分からない状態になってしまったんです。そこで一旦、考えてきたことは全部ポイッと(笑)また振り出しに戻って、今に至ります。
Q.ある程度考え続けたものを捨てて、ゼロからまた組み立てようと試みる忍耐力は、元々備わっていたのでしょうか。
A.自分一人で乗り越えようとしたわけではなく、既にプログラムの中で周囲の方々が一緒に考えて、サポートしてくれていたので「このまま辞めるのは何か違うな」と踏ん張れましたね。それも決して「これだけ協力してもらっているのに辞めるなんて言い出しづらい」というような後ろ向きな理由ではありません。「ここで辞める自分を見せるなんて格好悪い」というプライドが勝ったんだと思います。
Q.事業創出に対峙する中で、ご自身の中にあるプライドやモチベーションは確固たるものですか?
A.気分自体にはとても波があって、それを頑張っていつも引き上てくれているのがプライドですね。もちろん、プライドは高めだけれど気持ちは「氷点下」みたいな時期もありました(笑)そのいわば「氷河期」はこれまでに2度あって、1度目は先ほど話した「復帰して全ておじゃんにした」とき。
次が、それからちょうど1年後。原案が固まって、実際にプロダクト(サービス・製品)を作って、世間に打ち出そうと試行錯誤していた頃でした。
当時の自身は、ミッションそっちのけで「売上を立てること」に集中しすぎた面があり、事業の本質からズレていました。そのことを自覚せず優先順位を誤ったまま突き進んだ結果、「Fly beyond Demoday」において、社外有識者の方々から厳しいご意見を頂戴してしまったんです。それはもうボッコボコに(笑) その時が、これまでの事業全体で一番精神的にキツかったです。
Q.そこからどうやって立ち直られたのですか?
A.当然落ち込んだものの、社外有識者の皆さまから「売上を立てていなくとも先にプロダクトを作って試験的に運用していくべきではないか」というアドバイスが得られたので、逆にどこか安心感も生まれしたね。この事業は、どうしても先行投資が必要になる事業です。そこを無理やり投資しなくても回る形にしようと焦っていたことを自覚して、割り切って進むことの大切さを知りました。「頑張っていれば何とかなるよ」と当時の自分には言ってあげたいです。
Q.逆に周囲からの温かい言葉で印象に残っているものはありますか?
A.単純に聞こえるかもしれせんが、「頑張ってるね」と言ってもらえるだけでも凄く嬉しいです。以前自身が所属していた部門の方からそのように声をかけていただき、驚いたと同時に大変励みになりました。やはり所属部門を離れて今新しいことに挑んでいるので、それに理解を示してくださっていることが分かるだけでも有難いです。
あとはこの1年で自分から周りへ働きかけられるようになったのも、大きな変化かもしれません。以前は自分の中で考え抜いたものをアウトプットして、周囲の反応を見ることが多かったのですが、最近ではインターンシップ生を迎え入れたり、ようやく他者を巻き込んで動き出せるようになりました。
Q.その変化は何がきっかけだったのでしょうか?
A.以前から、自分が人を巻き込んで事業を推進できていないことには悩んでいて、それをある方に相談したのがきっかけです。その時「巻き込む」という考え方ではなく、まずは「周囲へ声をかけやすくなる環境を自ら作っていけば良い」とアドバイスを貰いました。
例えば、何か打ち合わせを終えた際には自分からお礼の連絡を入れておく。それによって次回その人に声をかけるハードルが少し下がります。このような意識を積み重ねていくだけで、自分から声をかけられる範囲がグッと広がりました。これは自分の行動の中で大きく変わった部分です。
Q.事業としては今後変化していく点、抱負などはありますか?
A.『EMOSHARE』は、1人でライブやスポーツを視聴・参加している人が、他の参加者とオンラインで語り合い、イベントをより楽しめるようなコミュニケーションツールの開発を目指しています。
その中で現在リリースされているプロトタイプを、まずは正式版として市場に広めていく、しっかりと広め切ることが直近の目標です。具体的には、利用者数1万人を達成したいです。その上で、単に多くのユーザーを獲得するのではなく、もっと先にある「事業として成り立つ仕組み」を突き詰めていく時期に今後入っていくと想定しています。
Q.最後に、イノベーションを起こそうと挑戦する方へのメッセージをお願いします。
A.組織として全員が「イノベーションを起こすべきだ!」と立ち上がる必要はないので、何か新しいことをするというよりは「やりたいことをする」方が大事です。
ただいずれにしても、自分一人で行動に移して実現まで繋げることは、大変難しいです。私自身が、この事業を立ち上げる中で、引っ込み思案な性格から人に頼ることができず、加速させるまでに時間がかかったと痛感しています。
だから、新しい一歩踏み出す前段階から、周りへ相談したり、自分のことを知ってもらおうとする習慣は身に着けておくと今後役立つと思います。たとえ周囲に頼ったとしても、相手は自分が予想しているより何倍も快く協力してくれるよと、過去の自分も含めて皆さんへお伝えしたいです。
新規事業部からのご案内
新規事業部では、今後も当社グループのイノベーションを支援していきます。また、イノベーション人材も紹介して参りますので、ご希望の方はお気軽にお問い合わせください◎
株式会社EMOSHAREについて、詳しくは下記リンクをご覧ください。
・株式会社EMOSHARE 公式サイト
・株式会社EMOSHAREに関するお問い合わせはこちらから
【南海グループのイノベーション人材シリーズ バックナンバー】
・Vol.1 南海不動産 塚本洋平さん – 海外IT人材紹介事業『Japal』
・Vol.2 『EveryBuddy』の松本恵さん・大橋優也さん ー音楽を通じて人を幸せにー
・vol.3『LAWN』の 佐々木健人さん ― テニスを通じて、人生を豊かに ―